祈年祭二月四日
集はり侍る神主・祝部等諸聞き食へよと宣ふ
高天原に神留り坐す皇睦神漏伎命・神漏彌命を以ちて天つ社國つ社と稱へ辭竟へ奉る皇神等の前に白さく
今年の二月に御年初め賜はむとして皇御孫の命の宇豆の幣帛を朝日の豐逆登りに稱辭竟へ奉らくと宣ふ
御年の皇神等の依さし奉らむ奥つ御年を手肱に水沫畫き垂れ向股に泥畫き寄せて取り作らむ奥つ御年を八束穂の伊加志穂に皇神等に依さし奉らば初穂をば千穎八百穎に奉り置き甕の閉高知り甕の腹満て雙べて汁にも穎にも稱辭竟へ奉らむ 大野原に生ふる物は甘菜・辛菜 青海原に住む物は 鰭の廣物・鰭の狭物 奥津藻葉・邊津藻葉に至るまでに 御服は明妙・照妙・和妙・荒妙に稱辭竟へ奉らむ 御年の皇神の前に 白き馬・白き猪・白き鶏 種種の色の物を備へ奉りて 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
大御巫の辭竟へ奉る皇神等の前に白さく 神魂・高御魂・生魂・足魂・玉留魂・大宮乃売・大御膳都神・辭代主と御名は白して 稱辭竟へ奉らくは 皇御孫命の御世を手長の御世と 堅磐に常磐に齋ひ奉り 茂御世に幸へ奉るが故に 皇吾睦神漏伎命・神漏彌命と 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
座摩の御巫の稱辭竟へ奉る皇神等の前に白さく 生井・榮井・津長井・阿須波・婆比支と御名は白して 辭竟へ奉らくは 皇神の敷き坐す下都磐根に宮柱太知り立て 高天原に千木高知りて 皇御孫命の瑞の御舎を仕へ奉りて 天御蔭・日御蔭と隠り坐して 四方の國を安國と平けく知食すが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
御門の御巫の稱辭竟へ奉る皇神等の前に白さく 櫛磐間門命・豐磐間門命と御名は白して 辭竟へ奉らくは 四方の御門に 湯都磐村の如く塞り坐して 朝には御門を開き奉り 夕には御門を閉て奉りて 疎夫留物の下より往かば下を守り 上より往かば上を守り 夜の守・日の守に守り奉るが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
生嶋の御巫の辭竟へ奉る皇神等の前に白さく 生國・足國と御名は白して辭竟へ奉らくは 皇神の敷き坐す嶋の八十嶋は 谷蟆の狭度る極 鹽沫の留る限 狭き國は廣く 峻しき國は平けく 嶋の八十嶋堕つる事無く 皇神等の依さし奉るが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
辭別きて 伊勢に坐す天照大御神の大前に白さく 皇神の見霽かし坐す四方の國は 天の壁立つ極 國の退立つ限 青雲の靄く極 白雲の墜り坐向伏す限 青海原は棹柁干さず 舟の艫の至り留る極 大海に舟満ち都都氣て 陸より往く道は荷の緒縛ひ堅めて 磐根木根履み佐久彌て 馬の爪の至り留る限長道間尤く立ち都都氣て狭き國は廣く 峻しき國は平けく 遠き國は八十綱打挂けて引き寄する事の如く 皇大御神の寄さし奉らば荷前は皇大御神の大前に 横山の如く打積み置きて 残をば平けく聞看さむ 又 皇御孫命の御世を 手長の御世と 堅磐に常磐に齋ひ奉り 茂御世に幸へ奉るが故に 皇吾睦神漏伎・神漏弥命と 宇事物頚根衝き抜きて 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
御県に坐す皇神等の前に白さく 高市・葛木・十市・志貴・山邊・曾布と御名は白して此の六つの御県に生り出づる甘菜・辛菜を持ち参来て 皇御孫命の長御膳の遠御膳と聞食すが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
山口に坐す皇神等の前に白さく 飛鳥・石村・忍坂・長谷・畝火・耳尤と御名は白して 遠山近山に生ひ立てる大木小木を 本末打切りて持ち参来て 皇御孫命の瑞の御舎仕へ奉りて 天御蔭・日御蔭と隠り坐して 四方の國を安國と平けく知食すが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を 稱辭竟へ奉らくと宣ふ
水分に坐す皇神等の前に白さく 吉野・宇陀・都祁・葛木と御名は白して辭竟へ奉らくは 皇神等の寄さし奉らむ奥都御年を八束穂の伊加志穂に寄さし奉らば 皇神等に 初穂は穎にも汁にも 甕の閉高知り 甕の腹満て雙べて 稱辭竟へ奉りて 遺をば皇御孫命の朝御食・夕御食の加牟加比に 長御食の遠御食と 赤丹穂に聞食すが故に 皇御孫命の宇豆の幣帛を稱辭竟へ奉らくを 諸聞き食へよと宣ふ
辭別きて 忌部の弱肩に太多須支取挂けて 持由麻波利仕へ奉れる幣帛を 神主・祝部等受け賜りて 事過たず捧げ持ちて奉れと宣ふ
春日祭
祝詞
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